土日に父対応をして、月曜の祝日は実家からやや離れたところにあるお墓参りをして、新幹線で帰ってきました。夜行バスよりは費用が掛かりますが、これなら家族と夕飯を食べられますから。
なので、珍しく父の家に一人で泊まることになり、片付けをしたり、コンビニ弁当での夕飯を食べたりして、やや疲れも感じていたので、夜の 8時ごろ、パソコンで調べ物を始めました。父とは最近『
漢字メイトmini』などの雑誌で漢字クロスワードを解いたりしているので、漢字についての検索をしていたのですが(Windows 10, Google Chrome)、
かつて
BTOパソコン.JP の毎日の更新を楽しんでいて、こんな
フィッシング詐欺についての記事も読んだりしていたものですが、2021年6月以降は更新されなくなり、その手の情報にやや縁遠くなっていたかもしれません。父を無事に施設に帰してホッとしたのもあり、また疲れを感じていたのもありました。
きれいに引っかかりましたね。
職場のパソコンも自宅のパソコンも音声は切っているのですが、父のパソコン(もはや父は使えていませんが)は音声が鳴るので、派手に警告メッセージが流れます。「このパソコンは外部から操作されています。電源を切らないで下さい。すぐにマイクロソフトのサポートセンターに電話して下さい」と繰り返し、切迫感のある声で訴えられます。
画面だけなら、気にせずにすぐに電源を切ったと思います。音声はパニックを誘導しますね。うまいなぁ、と今なら思います。
なぜか 010-123〜の電話番号を疑いもせずにダイヤルしました。知っている人には常識で、以前なら 050〜だったのが
昨年秋から 010 から始まる国際電話(010 のあと 1〜なら北米)の電話番号にかけさせるサポート詐欺については様々なところで報道されています。
で、これも
新聞サイトや
マイクロソフトのコミュニティーにもあるように、親切そうな、片言の日本語を喋る、中東系かインド系の男性が、写真入りのサイトを見せてきて、”私はマイクロソフトの〜〜です、調べればすぐに分かります」と言ってきて、さらに「そのパソコンの感染状況の確認のために、遠隔操作をするアプリをインストールして欲しい」と言ってきました。
典型的な手口ですね。これを信じて言われるがままに実行してしまった自分が恐ろしいのですが、パニックに陥っているときはこういうものなのだと、身に染みて感じました。
IT企業に勤務している方が引っかかるくらいですから。
遠隔操作アプリをダウンロードしてインストールさせられ、「ネットバンキングはしていませんか?」、と二度ほど訊かれましたが、父のパソコンだったことが幸いしました。何もしていませんでした。また、個人情報に関するファイルも全然無く、自宅と職場のメールアドレスがメールソフト(ThunderBird)にあったくらい、受信メール 6通、送信も 3通くらいしかありませんでした。
「McAfee のアンチウィルスソフトをインストールしてあげます。サブスクリクションで、5年なら 6万円、10年なら 8万円で 2台まで、生涯保証なら 12万円で 4台までインストールできます。どれにしますか?
「5年の 6万円ので」
「もう一度訊きます。10年保証の方が絶対にお得ですよ」
「いえ、5年ので」
「じゃあ、今すぐ払って下さい」
「銀行はもう閉っていて」
「近くにコンビニはありますか?」
遠隔操作で、IP を通じてでしょう、自宅付近の地図まで表示されます。
「セブンイレブンまで 5分くらいです」
「Apple カードで 1000円から 10万円まで払えるカードがあります。コンビニの ATM でお金を下ろしてそのカードを 6万円を払って買って下さい。店員に質問されたら、コンピューター用に使うことが分かったら税金が 30%かかります。子どものゲーム用に買う、と言えば大丈夫です。電話は切らずに、さあ、いってらっしゃい」
どっからどう見ても明確に詐欺ですね。深夜にいきなり金を払わせるのは詐欺以外ありません。
それを、”深夜なのにすぐにサポート対応してくれるなんて親切だなぁ”と思ってしまうのが、騙される人間の心理状況ですね。最初は無料対応と思わせて、安価な対応に思わせて、続いて 6万円を請求してくるのも上手な手口です。無料なら、と思って”まずはサポートセンターに”と電話してしまいましたから。
戻ってきたところで、
「四角に囲われているところの16桁の ID番号を入力して下さい」
この手の入力については数度確認する癖がついているので、間違っていない自信があったのですが、
「エラーが出ました。カメラがあればカメラで番号を撮影させて下さい。カメラがあるかは、今こちらで確認しています。ありませんね。では、パソコンにプリンターがつながっていますか?それでスキャンさせて下さい。ああ、ここの 2文字が逆になっていました。アップルからの支払いは停止されてしまいました」
スキャナーの操作をしている間に書き換えたのでしょう。これまた慣れていて、上手なやり口でした。
「あなたの口座番号を教えて下さい。6万円は返金します。ただ、保証金としてもう 6万円、合計で 12万円振り込みます。ですので、今度は Appleカードで 12万円、買ってきて下さい」
これを信じてしまうのですから、詐欺に引っかかったらなかなか抜け出せなくなるのを、今では恐ろしい体験として実感しています。
ところが、この点ではラッキーでした。コンビニに到着して夜の 9時をまわっていました。コンビニATM では夜の 9時以降はお金を下ろせないのです。
そろそろ”なんか詐欺っぽいな”と感じつつ、戻って
「すみません、日本のコンビニATM では夜の 9時以降はお金が下ろせません」
「分かります、私、いま東京の品川にいます」
…010-1〜なので北米にいるのですけどね。
「近くにマツモトキヨシはありますか?」
「ありません。ATM でお金を下ろせるのは明日朝 7時からです」
「それは早いですね。昼間に、いつならお金を払えますか?」
「新幹線に乗って自宅に帰るので、自宅に着くのは夕方 5時半、いえ、17:45 でしょうか」
「その時間に電話します。それまでに Apple カードで 12万円用意しておいて下さい」
そこで電話を切りました。
直後に、奥さんに電話しました、「こんなことがあってさぁ」
「絶対詐欺じゃん」
「あ、やっぱり?」
途中から、うすうすは感じているのです。でも、なかなかそれから抜け出せない、そこが心理誘導の手口ですね。
奥さんには
「この前、一緒に詐欺についてのテレビ番組を見たじゃん。そう言うのには引っかからないと思っていた」
「俺も、そこそこコンピューター関連には詳しいつもりでいて、大丈夫なつもりではいたんだけどなぁ」
「そういうのって、まずは LANケーブルを引っこ抜くよね。ああ、いま調べたけど、Ctrl + Alt + Delete でタスクマネージャーを立ち上げたら、そこからその画面を閉じることができるよ」
「言われてみたらそうだけど、そのときには考えもしなかったなぁ」
私を責めないでくれて助かりました。
被害が 6万円で済んだのは幸運でした。
上記の新聞記事では 107万円とか。私も、夜9時の払い戻し制限がなければ、追加で 12万円、合計 18万円奪われていました。いえ、もっとやられていたかもしれません。
自宅に着く前に、やや大きめの警察署に行ってみました。祝日の 17時半でも対応してくれました。
「詐欺の相手からもうすぐ電話が掛かってくるんです」
「ああ、それは出ないでください。電話が続くようなら”警察に言った”と言えば、もう掛かってこなくなりますよ」
あまりに一般化している詐欺だったからか、警察の対応は淡々とした事務手続きに終始しました。事情を話し、写真を、私と証拠物件を合わせて撮影されて放免されました。…事件が起こった管轄に連絡するものだそうですが、実家は朝 7時に出て、お墓参りもしたら新幹線の時間ももうギリギリでした。
銀行口座の口座番号も伝えてしまいましたが、“振り込みのため”と言っていましたし、そこで暗証番号などを聞いてきたら、さすがに私も怪しいと感じたでしょう。口座番号だけでは何もできないはず。実際、銀行に話してみましたが、怪しい動きはなかったようです。口座残高も問題ありませんでした。
“自分は大丈夫”、”引っかかるわけないじゃん”と思っている人ほど引っかかる、とよく聞いてきて、またいろいろな記事も読んできましたが、見事なまで引っかかりました。
絶対に必要なのが、人と話すこと。他人の視点で考えられたら、冷静になれるものです。それをさせないのも詐欺の手口ではありますが…。
お恥ずかしい限りですが、引っかかりを繰り返さないための備忘録として、また注意喚起として、体験を長々と紹介させていただきました。みなさんも、どうぞお気を付け下さい。