2022年12月07日

Icosamate ダイジェスト

この記事は Speedcubing Advent Calendar 2022 7日目の記事として書かれたものです。

speedsolve こと荒木慎平さん(去年、大村周平さんが紹介してくださっていますし、明かしても大丈夫と思うのですが…)、今年も Speedcubing Advent Calendar を企画してくださり、ありがとうございます。

6日目は ジャンプイコールAこと岸本さんによる「個人的EO・CO記憶法」でした。…すみません、相変わらず目隠し競技は勉強できてなく、せっかくの好記事も理解できないままですが、機会を見つけて勉強したいと思います。

明日の8日目は kits_さんによる「FTOスピード解法に関するメモ作成とその補足」です。

みなさん、こんにちは。遅いけれどもキューブ系パズルを廻すのが好きな愛好家です。

今年も秋口まで、私のブログで最も読まれた記事は 傀儡魔法1号、Puppet One に関するものでした。あと、メガミンクスのELLCLLF2L も少々)もそこそこ読んでいただいています。なので、今年も傀儡魔方1号 (Puppet One) でアドカレの記事を書こうかとも思いましたが、せっかく今年も、Clover Cube Plus, Curvy Starminx, SuperZ 2x2x2+Skewb と大きかったり一般的ではなかったりするパズルを紹介してきたので、せっかくなので、現在この手のパズルで最大の面数を誇る、でも意外とシンプルで楽しめる、アイコサメイト、Icosamate(イコサメイトと呼ぶ方もおられるようです)を紹介してみようと思いました。

Icosamate.JPG
ただ、残念ながらこのパズルは世界的に品切れです。今すぐに楽しんでみようとするなら、Void Pentultimate を入手し、Maruyama K さんが用意してくださっているパーツを購入(するかデータをダウンロードして 3D プリンターで成形)して組み立てるしかありません。

このパズルの世界記録(非公認)もその Maruyama K さんが 14:04.60 で解いています。おそらく破られることはないでしょう。

というのも、このアイコサメイト、販売されていた当時は mf8 の製品でしたが、本当にあっさりと一軸しか廻らない状態に陥ります。その場合、決して分解してはいけないそうです。内部のリングが壊れてしまうとか。さかいさんという方が紹介してくださっている対策として、唯一廻る一軸に対して両腕で圧力をかけ、ぐりぐりと左右に回転させることを繰り返すと、何かのはずみで再び他の軸も廻るようになります。

それが解決されるまでは、これが製品として再発売されることはないかもしれません。解いていて楽しいパズルだけに残念ですね。もしかしたら、Void Pentulutimate の方が回転が良く、それを改造したものであれば、ストレスなく、スムーズに解けるのかもしれません。

私も 6月に一旦完成させてからは放置していましたが、アドカレ用に解き直してみて地獄を見ました。本当に気軽に動かなくなってくれます。ネプチューンマンが頭にあったからか、”ロックアップ”と呼んでいましたが、stuck and immobile が適切かもしれません。”両腕で圧力をかけてぐりぐり”で筋肉痛になったくらいです。

で、このロックアップは頻発します。ぐりぐりで全軸が廻るようになった機会に、シリコンスプレーを塗布しまくるのですが、それでも構わず発生します。このパズルの手順はそこそこ長手順のものがありますが、その最中にロックアップしたら、ぐりぐりを 2〜3分頑張っている間に、何をどこまで廻して、どの面とどの面が合っているのかはすっかり忘れてしまいます。つまりは、そこで最初から解き直しになります。

なので、ちょっとしたロックアップ程度なら、気にしていてもキリがありません。また、廻そうとして引っかかって危うさを感じたら、逆方向に 4つ(1つ廻しで 72°)廻す勇気も必要です。無理せず、優しく廻します。コーナーカットを期待するなど、とんでもありません。

一方で、もし素直に回せたら 5分くらいで解けるようにも感じています。揃えていくのが楽しいパズルであることは間違いありません。

解法動画としては Superantoniovivaldi さん(英語)と rakaCN さん(ベトナム語)のものがあります。Superantoniovivaldi さんは用いている手順が少なく、そのぶん手間が掛かるので、その解法は、トラブルが多発するこのパズルには向かないように感じています。rakaCN さんの手順は素晴らしいのですが、聞き取りにくいボソボソとしたベトナム語なので、止めて再生して確認することを繰り返して理解していかないといけません。

解き方は 6月頃に一通り紹介しましたが、ここでもダイジェストでお伝えしましょう。色合いについてはこちらをご覧ください。

一部を示すと、
IcosColor1.JPG
時計回りに 白,黄,濃赤,青,赤

私は色弱で色の識別に苦労していますが、この 5色は識別しやすく、まずはこの色の隅(コーナー)から揃えていっています。それを上段とすると、

IcosColor2.JPG

こちらが下段となります。時計回りに 明橙,水色,濃橙,[女乃](ない:クリーム色),灰色、これらも比較的判断しやすい色ですね。

揃え方は、

1.隅位置合わせ
2.隅向き替え
3.中合わせ

の順に行っています。一つの隅に 5色あり、全てが見にくい色であることはないので、隅合わせはどうにかなります。中合わせは全く識別できない色の組み合わせがありますが、2点交換が残ったら、その最も分かりにくい 2色の交換も発生しているはずなので、それが判断基準となります。

こんなふうに真っ二つになるように回転するパズルです。
IcosDivideTwo.jpg

スクランブルは csTimer の Other→FTO (Face-Turning Octahedron) のものを用いていますが、その真っ二つ回転のおかげで、U と D は同じ動きになります。もちろん基準面が動くので、スクランブルとしての意味合いは変わり、そのことは気にしなくても良いと思っています。

ただ、
Icosamate_FrontEdge.jpg
この四角で囲った、上辺の位置を常に前面に維持することが大事ですね。そこが意識できていないと、どこを廻しているのか、すぐに分からなくなってしまいます。

私はルービックキューブを、群論を専門とする数学者である島内剛一先生(面識はありません)の『ルービック・キューブと数学パズル』を読んで始めたのもあり、記号法も島内先生の S式を踏襲した J式で統一しています。U, F, R, B, L, D が t (top), s (south), e (east), n (north), w (west), b (bottom) となります(回転の頂点が大文字、回転記号は小文字)。このパズルにおいては、面転八面体 (FTO) での BR が n, BL が i, Lo (L の 点対称位置)が g, Bo (BR の 点対称位置)が o, bo (BL の 点対称位置) が m となりますが、FTO の記号方もいろいろあるようなので、あまり気にせず、私は以下の記号を用いていることだけ分かっていただければと思います。いちおう、カッコで WCA表記を示したりもしています。
IcosamateLinesNote'.jpg
真っ二つになるように廻るので混乱しやすいのですが、T-S の稜を意識することで向きを保ちやすく感じています。

手順についてはまとめをご覧いただければと思いますが、抜粋すると、

1.隅合わせ:出迎え
Icosamate1Demukae.jpg
b- g- b g (rakaCN さんの記号なら D' R' D R)

二点交換x2(基本はT⇔S と I⇔N の二点交換x2)
Icosamate2Ex2-2.jpg
e- w e w- (Superantoniovivaldi さん の記号で R' L R L') または w e- w- e (L R' L' R)

TSW の三隅移動
Icosamate3OCW.jpg
T→S→W→T の左上三隅時計移動:(w e- w- e) o (w e- w- e) o- / (L R' L' R) Bo (L R' L' R) Bo'

2.隅向き替え

E –1, N +1 の二隅向き替え
IcosamateCornerOrientEN.jpg
(g- b- g b2 g- b- g t)(g- b g b-2 g- b g t-) / (Lo' D' Lo D2 Lo' D' Lo U)(Lo' D Lo D'2 Lo' D Lo U')

上隅単独時計回転手順
IcosamateCornerOrientTop'.jpg
時計廻し:{(g- b- g t)(g- b g t)}^3 / {(Lo' D' Lo U)(Lo' D Lo U)}x3

3.中合わせ

三中移動(WSO→SEM→MBO→WSO)
IcosamateMid3OCW'.jpg
三中時計:{(g o- g- o) t- (o- g o g-) t}^2 / {(Lo Bo' Lo' Bo) U' (Bo' Lo Bo Lo') U}x2

などを駆使することで解くことができます。

スクランブル例として、
B' BL' R' U' BL U' R D' L' BR' R U' R F' U' D L' R' BL D B BL' R' D' L'

IcosScramble.JPG
となりました。

IcosScrCorner.JPG
せっかく、白・黄の二隅が揃っているので、まずは黄の 3隅めを揃えたいですね。これもいい位置にあるので、反時計72°×2手順、g- b2 g-2 で向きも合わせてしまいます。

…という感じで試し解きを写真付きで解説してみようかとも思ったのですが、度重なるロックアップで心が挫け、諦めました。雰囲気だけ感じていただければと思います。

解いてる最中にロックアップして最初からやり直しになることが続きましたが、いちおう現時点で 7回、時間を測って解くことができました。その 7回は、つまりはロックアップが軽くで済んで、どうにか復旧できた場合ということになります。

最速 / mo3 / ao5 / 全平均 = 17:46.70 / 25:27.65 / 25:27.65 / 39:01.67

IcosResult.jpg

最後に 20分を切る結果を出せてホッとしました。

ちゃんと廻ってくれさえすれば、とても楽しいパズルです。回転が改良された製品が発売された暁には、ぜひお楽しみいただければと思います。

ここまで読んでくださったみなさん、ありがとうございました。明日以降の Speedcubing Advent Calendar 2022 も楽しみですね。素晴らしい記事を期待しています。

posted by じゅうべい at 08:11| Comment(2) | 球・円柱・12面体以上
この記事へのコメント
作り方と世界記録を引用・紹介して下さり、ありがとうございました。
Posted by Maruyama K at 2023年06月24日 20:02
コメントありがとうございます。Icosamate と言ったら並ぶもののない著名な方に記事を読んでいただき、光栄な限りです。
今度、Void PentUltimate を購入する予定です。動きが良いようであればパーツを購入させていただきます。どうぞよろしくお願いします。
Posted by じゅうべい at 2023年06月26日 11:13
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]