2021年12月07日

傀儡魔方1号(Puppet One)ダイジェスト

この記事は Speedcubing Advent Calendar 2021 7日目の記事として書かれたものです。
荒木慎平さん、今年も Speedcubing Advent Calendar を企画してくださり、ありがとうございます。
6日目は チョコボックスさんによる「目隠しルービックキューブ解法、コーナーorozcoはいいぞ」でした。
明日の8日目は kits_さんによる「8つのパーツを持つパズルについて」です。

みなさん、こんにちは。遅いけれどもキューブ系パズルを廻すのが好きな愛好家です。自己紹介については、FMC Advent Calendar 2021 にも記事を書いたので、そちらをご覧いただければと思います。

Speedcubing Advent Calendar 2021 では昨年同様、八面体パズルと目隠し競技で著名な kits_さんの前日の枠をいただいたので、Master FTO ネタで書くべきとも思いましたが…。

2021年の私のブログで最も読まれた記事は、絶対的に傀儡魔法1号、Puppet One に関するものでした。閲覧数の7割を占めるかもしれません。次がメガミンクスの ELLCLLF2L も少々)、その次がなぜかルービッククロックの解法についてでした。私の変な解き方も、参考にしてくださる方がいることを嬉しく思います。

ということで、今年の Advent Calendar の記事としては、傀儡魔法1号
Puppet1_solved.JPG Puppet1_te.JPG
の紹介を書かせていただきます。ただ、今年の1〜3月当時、合計 15回ぶんの記事になってしまったので、本記事では端折ったダイジェストとさせていただきます。

このパズルは 傀儡魔方[復の右]原教程 などでも示されているように、Bandaged 3x3x3、癒合して回転制限を掛けた 3x3x3 ではありますが、単層・複層回転がめまぐるしく入れ替わるので、実質の回転は 2x2x2 と同様の上・右・前 (J式で t, e, s、WCA表記では U, R, F)となります。きちんと表記する方は U(単層廻し)と Uw(複層廻し)を分けていますが、片方ができるときにはもう片方はできません。私としては単層・複層廻しの違いについては気にしなくていい気がしています。

たった 3手廻しただけで、もはや復旧できない地獄に簡単に迷い込めます。スクエア1も発売当時は同様だったことでしょう。構造はシンプルなのに、回転制限と変形で地獄を彷徨わされた挙げ句、成形ができてもまだ向き合わせ・色合わせが残っている点で、この傀儡魔法1号とスクエア1はよく似ていると思います。拡張版の””が遊びにくいのも同様ですね。

文字と記号による解法は 傀儡魔方[復の右]原教程 が素晴らしいですね。動画としては、当時は MoYu Puppet Cube V1 Tutorial | English Language を紹介しましたが、他にも MoYu Puppet Cube V1 Tutorial、最近では Easiest Way to Solve Puppet Cube V1 などというものも紹介されています。私の記事を読むよりは、これらの動画を視聴する方がよっぽど有益かもしれません。

ただ、これらの記事・動画では成形後の移動を主としているのに対し、私はスクエア1でもそうですが、この手のパズルの成形過程が大好きで、その過程を追っているだけでウキウキしてしまいます。ですので、この記事では成形を中心とし、残りは最低限の手順を紹介することに留めます。

配置は 傀儡魔方[復の右]原教程 同様に、小さい四角(以下、”小角”とします)3つが見える向き、上の写真左の向きを基本にします。それをくわえ込んでいる L型の隅を含隅、小角を含まない隅を平隅とします。青の向かいが緑、黄の向かいが白、赤の向かいが橙なのは、一般的な 3x3x3 の世界配色と同様です。

回転記号は以下の J式を用い、"/" のあとに WCA表記を併記しようと思います。
Puppet1_notation.jpg
私の記事の通例ではありますが、そのままなら時計廻しに 90°回転、反時計90°廻しは t- のように "-" を(本来は右肩付き)で、180°回転は t2 のように "2" を(これまた本来は右肩付き)で添えることで示します。面を示す場合は大文字で表記します。稀にですが、左列を廻すことで他の位置関係を保つことがあり、その場合はその回転は w(WCA表記で L)で表します。

この傀儡1号で成形の森に迷い込んだら、可能な限り、白・橙・緑の平隅を揃えていきましょう。向きは気にせず、可能なら 4つ、無理なら 2つでも構いません。回転制限で、それ以上どこにも廻せなくなったら素直に戻りましょう。

廻しているうちに見慣れた形に遭遇するようになるでしょう。それが以下の Z四角やΓ乗り、三凸などの形であったら、手順を廻すことで立方体に戻せます。

Z四角・右前上_前             煙突(右前_上)                サムアップ(左前_上)        Z四角・右前下_右
Pup1_tet2e-t-_S.JPG        Pup1_Z四角2・煙突.JPG        Pup1_Z四角3・サムアップ.JPG        Pup1_Z四角4・右前下_右.JPG
t e t2 e- t-                    s- e- s2 e s                  e- s- t- e2 t e               e- s2 e s
/ U R U2 R' U'                / F' R' F2 R F                 / R' F' U' R2 U R            / R' F2 R F

Z四角・左前上_前             Z四角・右上奥_右             Z四角・左下奥_奥                 Z四角・左下前_前
Pup1_Z四角5・左前上_前.JPG        Pup1_Z四角6・右上奥_右.JPG        Pup1_Z四角7・左下奥_奥.JPG            Pup1_Z四角8・左下前_前.JPG
s- t2 s t / F' U2 F U       e t2 e- t- / R U2 R' U'    e- s- t2 s t / R' F' U2 F U    t- s- t2 s w / U' F' U2 F L

ほぼ同じ形でこれだけ様々なのが恐ろしいですね。これでもまだ全てではありません。もちろん、持ち替えで同じ形になるものもありますが、含隅・平隅の組み合わせなど、気をつけて識別しなくてはなりません。

これらを全て写真付きで示していたらキリがありませんね。残りは一部に絞って提示することにします。

以下のΓ乗り片十字とΓ乗り中は似て非なる形状なのでお気をつけください。頻出成形で、さらに複数の手順で立方体に戻せますが、ここでは手順は一つだけ示しておきます。これが戻せるようになって、だいぶ光が差したものでした。

Γ(ガンマ)乗り・右十字        Γ乗り・前十字                  Γ乗り中・右                      Γ乗り中・前
Pup1_s-e-ses_S.JPG        Pup1_ese-s-e-_S.JPG        Pup1_e2t-e-s-tste_S.JPG        Pup1_s2tset-e-t-s-_S.JPG
s- e- s e s                    e s e- s- e-                    e2 t- e- s- t s t e           s2 t s e t- e- t- s-
/ F' R' F R F                   / R F R' F' R'                   / R2 U' R' F' U F U R       / F2 T F S U' R' U' F'

3手で戻せる重要成形が以下の二つですが、慣れるまでは形状を把握しにくいですね。

右前凸右奥凸              左前凸右前凸
Pup1_右前凸右奥凸.JPG    Pup1_左前凸右前凸.JPG
s- t- s / F' U' F          e t e- / R U R'

右上前が出っ張る(凸)以下の三つはどこが残りの大部分と平らな面を形成するかが重要になります。前右両面に小角で十字が作られるのも特徴です。

三凸・右平            三凸・前平                        三凸・上平
Pup1_両十字・右前上・右平.JPG        Pup1_両十字・右前上・前平.JPG         Pup1_両十字・右前上・上平.JPG
t e t2 e- t- s- t- s          (e t- e-) t- s- t2 s t        (t e t e-) t- s- t s t
/ U R U2 R' U' F' U' F      / (R U' R') U' F' U2 F U    / (U R U R') U' F' U F U

十字門もよく遭遇しますね。前面に小角で十字、上に含角・下に大角でまるで門のような形状となります。これもいろいろあり、

十字門・左L右Γ             十字門・左L奥L             十字門・左Γ乗り奥Γ     十字門・左Γ乗り奥品
Pup1_十字門・左L右Γ.JPG        Pup1_十字門・左L奥L.JPG        Pup1_十字門・左Γ乗り奥Γ.JPG       Pup1_十字門・左Γ乗り奥品.JPG
s t- e s- t- e- t e s        e t2 e- s t s- t- s-          s- e s e- s2                   (e t2 e-) t e t2 e- t-
/ F U' R F' U' R' U R F     / R U2 R' F U F' U' F'       / F' R F R' F2                 / (R U2 R') U R U2 R' U'

十字門もまだまだたくさんありますが、これだけに留めます。右二つなどどう違うのかと思われるでしょうけど、背面が Γ か 品 で手順が全然変わってきます。

十字門に似ている小門もいくつかあり、また十字門に関連して大Z(風車のように廻ります)が発生することもあります。

小門・上平左品奥L         右 大Z・下四角                 左 大Z・下J奥J       
Pup1_小門・上平左品奥L.JPG       Pup1_右大Z・下四.JPG            Pup1_左大Z・奥J.JPG
(e t2 e-) s- t s e t- e- t-   (t2 e t e) t e t2 e- t- s- t- s      s e2 t- e- t-
/ (R U2 R') F' U F R U' R' U' / (U2 R U R) U R U2 R' U' F' U' F   / F R2 U' R' U'

他と似ていて簡単そうだけど苦しむものとしては、Z入れ違いやΓ乗り前凸、左浮きなどがありますが、

Z入れ違い                      Γ乗り前十字_前凸        右十字_右上前・前_左浮
Pup1_Z入れ違い.JPG              Pup1_Γ乗り前十字・前凸.JPG         Pup1_右十字凸右平_左浮.JPG
(t- e- t)(e t2 e-) s- t s e t- e- t-     (t- e t e-) e- s e t s- t- s-     (t e t s- t2 s)(e t- e-) s- t s t
/ (U' R' U)(R U2 R') F' U F R U' R' U'   / (U' R U R') R' F R U F' U' F'   (U R U F' U2 F)(R U' R') F' U F U

このあたりまで戻せたら、廻しているうちに基本手順に戻せると思います。

容易には戻れない円形の門のような形があり、そこを潜ってしまうと容易には戻れなくなりますが、めげずにいろいろ廻しているうちに、「あっ、この形ならあれだ」などと分かるようになってきます。そうなったらしめたものですね。

形状を把握することで立方体に戻すことができたら、含隅・平隅の位置合わせです。向き合わせはなく、位置が合ったら向きも合います。右上前は向きを替えることができないので、そこに合わせることを考えましょう。

手順はいろいろありますが、詳細は過去記事をご覧ください。含隅二点交換と平隅二点交換があれば、どの状況にも対応できます。

上含隅交換
上対隅交換.jpg
(s e- s- e t2 e t-2 e- t s- t- s)(e t- e- t- s- t2 s t)
/ (F R' F' R U2 R U'2 R' U F' U' F)(R U' R' U' F' U2 F U)

左平隅交換
左対隅交換.jpg
(t2 s t- s- t2 s- t- s)(t s- t- s- e- s2 e s)
/ (U2 F U' F' U2 F' U' F)(U F' U' F' R' F2 R F)

小角移動も手順の数が膨大なので過去記事やそのまとめを参照していただくこととし、ここでは基本手順だけを示します。

小角平行:前(二回繰り返せば、前二小角の向き替え)
平行_前.jpg
t e t- (t- e-)^3 e- t e / U R U' (U' R')x3 R' U R

左列三角_上を前
小角左列三角.jpg
(e t- e- t)(s e- s- e)(t s- t- s) w (s- t s t-)(e- s e s-)(t- e t e-) w-
/ (R U' R' U)(F R' F' R)(U F' U' F) L (F' U F U')(R' F R F')(U' R U R') L'

小角左奥→前左→前右 3巡(上右の小角向き替え→3回廻せば上右小角反転のみ)
小角左奥→前と前左→右.jpg
t e t (e- t-)^2 e2 (t e)^2 t e- t- / U R U (R' U')x2 R2 (U R)x2 U R' U'

小角右奥→前右→前左3巡(右上反転→3回廻せば右上小角反転のみ)
小角右奥→前と前右→左.jpg
e- t- e- (t e)^2 t2 (e- t-)^2 e- t e / R' U' R' (U R)x2 U2 (R' U')x2 R' U R

三小角反転:上2&前左
三小角反転.jpg
[t- s- (t s)^2 t (s- t-)^4 (s t)^2 s]^2 / [U' F' (U F)x2 U (F' U')x4 (F U)x2 F]x2

奥から前の三点移動は強力でかつ世間では知られていない手順です。これらを使えると効率が大きく上がります。

隅移動と小角移動の手順を尽くせば、この複雑なパズルも解くことができるでしょう。小角が奥にある場合は見出すのが大変になりますが、うまく含隅・平隅をずらして探し出してください。

その後もこのパズルでタイムトライアルをした人は MoYu Puppet Cube Version 1 Solution | World Record (6:01.20 でタイマーを止めていますが、完成したのは 5:50)以外はいないようですね。

ですので、私の単発 / ao5 / ao12 = 3:05.29 / 4:47:54 / 5:24.54

は一応まだ世界記録のようです(試技者 2人)。…私もその後、全然廻していませんね。

スクランブルとしては、当時の試し解きの記事(最初にも書きましたが、そこの解法にはミスがあります)で書いたように、三凸右平:t e t2 e- t- s- t- s / U R U2 R' U' F' U' F などのあとに 2x2x2 スクランブルを数手、廻せるだけ廻してみる感じで崩していました。

当時も書きましたが、指と目と頭の廻りが速い世間のキューバーなら 2分、いえ 1分を楽に切れることでしょう。ぜひ試してみていただけたらと思います。

ここまで読んでくださったみなさん、ありがとうございました。明日以降の Speedcubing Advent Calendar 2021 も楽しみですね。素晴らしい記事を期待しています。

posted by じゅうべい at 00:00| Comment(0) | Pyramorphix
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