2020年12月07日

kits_さんの前日に面転八面体(FTO)の開眼解法について

この記事は Speedcubing Advent Calendar 2020 7日目の記事として書かれたものです。
6日目は 2009年度4x4x4キューブ世界チャンピオン、shuhei_omura444さんによる「精読 SCJホームページ」でした。大村周平さんの本は持っています。世界上位1%ってすごいですね。
8日目は kits_さんによる「8日なので FTO BLD について」です。

4日目の TK16zaemonさんの息子らに影響されてスピードキューブを始めた中年はかく思う。および 5日目の くるくるキャプテンスピードキュービング界における中年の参入も興味深い内容でしたが、コメントなどは別記事にさせていただきます。

みなさん、こんにちは。昨年、FMC Advend Calendar で記事を書かせていただき、それ以来、キューブ関係の“独自の”内容のブログを続けていますが、大会にも計測会にも参加したことはなく、毎週 tribox コンテストに参加しているだけです。さらに、どの競技も遅く、下位の常連となっています。そんな私ですが、“初心者を惑わす妄言を吐く輩”などと排撃しないでいただけるとありがたいです。

さて、FTO, Face-Turning Octahedron についてですが、実は詳細はこのブログの 9月〜11月に延々と書いたので、今回は「明日の kits_さんの、目隠しで FTO を解く記事のガイドになればいいな」、程度のコンパクトなものにしたいと思います。

八面体のパズルと言えば、Skewb Diamond
SkewbDiamond.JPG
も有名ですね。それが二層のパズルとすると、Face Turning Octahedron
FaceturnOctahedron.JPG
は三層のパズルになります。2x2x2 に対する 3x3x3 と思っていただいても良いでしょう。面が廻ります。頂点が廻るタイプのものは全くの別物なので気をつけましょう。…現在、入手は難しいようです。

パズルはLanLan製が tribox で購入可能です。日本では"Face Turn Octahedron"という表記が多いのですが、海外では"Face-Turning Octahedron"、と"ing"が入るので、検索の際にはご注意ください。以前は Maru製 もありましたが、この The Cubicle 以外でも”現在お取り扱いしておりません”ばかり、現在は入手は難しいですね。一方、DianSheng製 は ZiiCube でまだ購入可能です。The Cubicle も“品切れ”表示なので、注文すれば入荷されるかもしれません。…10月にはまだ The Cubicle でも見かけたのですが。

私が持っている LanLan製はシリコンスプレーを差せば充分によく廻ってくれますが、よくポップしてくれます。愛好者が増えつつあるので、将来はもっと廻しやすいもの、さらには磁石入りの製品も発売されるようになればいいなと思います。

解法サイトとしては Kemi さんのサイト が充実していてお勧めです。Jaap氏のサイト はコンパクトですが、図がなくて分かりにくく、魔術方塊 (ここでは”面転八面体”と示されています)はRex Cube や Master Skewb の解法を応用して解ける、程度のことしか載せていないのが残念です。

解法動画をよく示している benpuzzles の人が 14.648秒で解いたそうです。まったくもって信じられません。動画でなく、図と文章で解法を紹介してくれている FTO Notes というサイトもありますが、読んでも全然分かりません。まぁ、私は様々な解法を理解できないので、私が分からないのは、世間の人が理解できるかどうかの指標にはなりませんが。

回転記号については、FTO Notes では頂点が自分の方を向くように持つので、
FaceTOct_notation_Ben.jpg
となりますが、めちゃくちゃ分かりにくく感じました。特に U と F を頻回に間違えました。背面を時計廻し(手前から見たら反時計廻し)に廻すのがD になります。反時計廻しの場合はプライム記号 ( ' ) を添えます。内層廻し(スライスムーブ)は R と同じ方向に廻すものを Rs としています。また、このサイトの解法では持ち替えが多用されますが、R と同じ方向にパズル全体を廻すことが Ro などと表記されます。慣れるまでは間違わないように慎重に、考えながら廻さなければなりません。さらに混乱を生むのが T, T' です。他の回転は全て 120°づつ廻すのですが、このT, T' は、頂点を自分に向けた状態のまま、パズル全体を 90° 時計回り、または反時計回りに廻すことを意味します。

これが公式なスクランブル記号になったらちょっと大変ですね。

一方、感覚的に納得いくのが Kemi さんのサイト で、
FaceTOct_notation_Kemi.jpg
前面は F、上面が U、と他のパズルと同様になっていて分かりやすいです。反時計廻しの場合はプライム記号 ( ' ) を添えるのは一般的な表記や Ben Puzzle と同様です。内層記号も 4x4x4 などの他のパズルと同様に、R列の内層をR列と同じ方向に回転することを小文字を用いて r と表しています。これを一般的な記号体系としているところもあるようです。ただ、その場合、 Kemi さんの B が BR, その鏡対称の面が BL, 底面が D, 背面が B となります。

ここでは、島内先生の S式にちなんだ J式でやらせていただきます。
FaceTOct_notation'.jpg
上面 t (top), 下面 b (bottom)、左前面から側面を反時計回りの順に w (west), s (south), e (east), n (north) と定義していくのは島内先生の S式と同様ですが、J式メガミンクスと同様に、左背面は i (亥より)とします。内層は e列回転の一層内側を e と同方向に回すことを ej, w列の一層内側を wと同方向に回すことを wj とします。下付文字はこのブログの仕様で用いられないのでご容赦を。反時計廻しは"−"を添えますが、本来は上付きですが、ブログの仕様上やむを得ず、上付きでなく表記します。回転は小文字で、面は大文字で示します。S面の真裏、FTO Notes では D とされる面は十二支の始まりに相当する最初のアルファベット、a (面としては A)とします。

各小片の名称は
FaceTOct_pieces_corner.jpg
を”隅”(Kemi さんは ”コーナー”、FTO Notes でも "Corners"、魔術方塊では "角")、
FaceTOct_pieces_edge’.jpg
を”辺”(Kemi さんは ”エッジ”、FTO Notes でも "Edges"、魔術方塊では "辺")、
FaceTOct_pieces_inner.jpg
を”塁”(Kemi さんは ”インナー”、FTO Notes では "Triangles"、魔術方塊では "中心三角")、

と呼ぶことにさせていただきます。どうにか漢字一字で統一したかったので、”塁”に無理があるのは承知の上で、隅を内側から支える土塁をイメージして命名しました。

J式解法の概略としては
1. 最初の六つ組(Ben Puzzle の FTO Notes での 1st Center)
2. 六つ組その2
3. 六つ組の辺合わせ(一つもしくは二つ)
4. 六つ組その1の隅合わせ
5. 六つ組その2の隅合わせ
6. 合わせた二面に隣接しない二面の塁揃え
7. 残りの四面の塁揃え
8. 辺合わせ

となります。
前半に FTO Notes のアイデアを利用することで、後半の Kemi さんの解法で用いる手順の作業量を軽減させています。

一方、FTO Notes の Last 3 Triples とか、全く理解できません。15秒を切った解法動画の最後に s (w e- w- e) s- w- t w t- で完成させていますが(彼の表記で示せば U (L R' L' R) U' - L' B L B')、「んなうまい状況がそうそうあるもんでもないじゃん」と思ってしまいました。理解できるなら、そちらの方が絶対的に速いので、ぜひご覧ください。

と、ここで解法を全て解説していたら、いくら紙面があっても足りません。詳細は当ブログの該当記事をご覧ください。ですが、それだけで終わるのは寂しいので、15秒を切った動画の解法解説のスクランブルを解いてみましょう。

BR U' BR R BL' L' R B' BR' U' BL BR' U L U' L' BR F' D' B' F L' D' BR U B F L B' F'
回転記号は BenPuzzle の FTO Notes 式です。動画と同じスクランブルになったことを alg.cubing.net v2 で確認しました。

Ex3#1_ScrF.jpgEx3#1_ScrH.jpg
右は、奥から手前に 180°回転 (x2) することで、底面が上、背面が前を向くようにした図になります。以下も同様です。

すみませんが、1つめの六つ組を青で揃えるために、青前 (FTO Notes で U面) 白上 (FTO Notes で B面) 橙右 (FTO Notes で R面) でスクランブルしました。動画との色対応は、英字を FTO Notes 動画、漢字をこのブログで用いる色として、
Green →黄, White →青, Orange →緑, Purple →紫,
Yellow →灰, Sky Blue →白, Pink →赤, Red →橙、
となっています。

上段の 4色と下段の 4色は混じり合わないことは把握しておきましょう。

いきなりですが、benPuzzle の人は  t w n- a- e で最初の六つ組を完成させてしまいました。
Ex3#2_Blue6F.jpgEx3#2_Blue6H.jpg
くっついている辺と塁は切りにくいものですが、彼は容赦がありませんでした。最初の t w で 3 を作り、n- で二つ目の 3、a- e- で、3 と 3 を合わせて六つ組を完成させました。私なら 7, 8手かかりそうです。この青六つ組の辺の色が時計回りに 白→橙→灰、と正位置になっていることもご確認ください。

以後は理解不能だったので J式で解かせていただきます。まず、eo- で青が底面に向くように持ち替えて、
Ex3#3_oriBlue6F.jpgEx3#3_oriBlue6H.jpg
紫の六つ組を作るのですが、左背面 (I面) に 3、右背面 (n面) に 2ができています。かなりのラッキー状態ですね。s- n t s t で紫の六つ組が完成します。これも廻しやすくて助かりました。辺も、白→赤→橙、と正位置に配置できました。
Ex3#2_Purple6F.jpgEx3#2_Purple6H.jpg
青隅は i- b- s- n b- n で揃いました。これは分かりやすいと思います。
Ex3#3_BlueCorF.jpgEx3#3_BlueCorH.jpg
紫隅は上面反時計廻し、s e- s i s- e s i- s で位置が合いますが、ラッキーにも向きも揃っていて、向き替え手順 s i- b n b- i は不要でした。to、水平に時計廻しに120°持ち替えで
Ex3#3'_PurpleCorF.jpgEx3#3'_PurpleCorH.jpg
緑黄の塁交換は 1回ですみました。これもラッキーですね。s (ej n ej- n-) s- で
Ex3#4_RuiYG_F.jpgEx3#4_RuiYG_H.jpg
となります。だいぶ揃ってきましたね。次は、白赤橙灰の四面の塁交換です。二面での三点交換は Kemi さんのサイトの手順のままですが、三面での三点交換はそれを二重共役した
n t ((s- i s) ej (s- i- s) ej-) t- n-
などで廻していました。12手もかかっていましたね。ところが、kits_さんが載せてくださっていた手順の向きを変え、
sj (n s n-) sj- (n s- n-) (sj は s に平行な内層回しとします)で
4innerNew_3Lup.jpg
の三点交換ができることが分かりました。4手も浮くなんて素晴らしいですね。さっそく wo- で青前灰上になるように持ち替えて、
Ex3#5a_RuiOWN_F.jpgEx3#5a_RuiOWN_H.jpg
e ((n s n-) sj (n s- n-) sj-) e- で
Ex3#5aa_RuiOWN_F.jpg
となります(背面は変わりません)。灰色面は揃ったので io- で背面に向けて、紫前 橙上にして
Ex3#5b_RuiOWR_F.jpgEx3#5b_RuiOWR_H.jpg
二重共役を用いて、e- t- (sj (n s n-) sj- (n s- n-)) t e で
Ex3#5bb_RuiOWR_F.jpg
あとは一つづつ入れるしかありませんね。so で紫前 赤上になるように持ち替えて ej (s- i s) ej- (s- i- s) で
Ex3#5c_RuiWR_F.jpg
e- ((s n- s-) wj- (s n s-) wj) e で
Ex3#5d_RuiOR_F.jpg
ようやく塁が揃いました。辺は (e t e- t)^2 は廻しやすいので先にやってしまいましょう。紫を上にして (e t e- t)^2 で
Ex3#6a_EdgePurple_F.jpgEx3#6a_EdgePurple_H.jpg
黄を上にして (e t- e- t-)^2 で
Ex3#6b_EdgeYellow_F.jpgEx3#6b_EdgeYellow_H.jpg
最後に wo to- で 黄前 橙上になるように持ち替えて、
s- ((ej wj- ej-) w (ej wj ej-) w-) s で完成です。

手数は、
青六つ組 5 + 紫六つ組 5 + 青隅 6 + 紫隅 9 + 塁 緑黄 6
+ (塁 白赤橙灰 10 + 12 + 8 + 10) + (辺 8 x 2 + 10)

= 10 + 21 + 40 + 26 = 97手、100手を切りました。

解いてみたところ、4分55秒でした。私の FTO の最速が 4:02, ao5 で 5:44、指と目と頭の回転が速い人がいいパズルを使って廻せば、この解法でも 2分を切れることでしょう。

コンパクトにするつもりが、やたらと長くなってしまいましたが、FTO についての雰囲気は掴めたことでしょう。kits_さんの記事を読む上で多少とも参考になれば嬉しいです。

それでは、メリークリスマス!

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posted by じゅうべい at 00:00| Comment(0) | Octahedron